第3章

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お昼過ぎ、ようやくノワール侯爵家に到着した。 ちなみに、馬車の中でちょこちょこと昼食を摘まむことができた。空間ボックスは本当に便利な魔法だ。 ノワール侯爵家は、流石というべきか、重厚感漂う佇まいだった。 レンガ造りのフラム家とは違い、こちらは石造り。 (うわ、何だあれ?魔獣?) サラが見つけたのは、屋根の上に配置されたガーゴイルだ。 それは頭部に角を生やし、牙を剥き出しにする怪物の彫像で、お昼前から曇り始めた空を背景に不気味に映った。 馬車を降りると、執事であろう男性に応接室らしき部屋に案内された。 毛足の長いカーペットの上に、黒檀(こくたん)製の応接セットが並んでいる。 フラム家の4人は椅子に腰掛け、使用人がその後ろに控えて待っていると、ドアがカチャリと開いた。 「待たせてすみませんな。」 そう言って入ってきたのは、全身が黒い壮年の男性だ。 (―コイツが、ノワール家当主か。) 黒い髪、黒い瞳。喪服であろうスーツも黒く、サラには馴染みのある色合いだ。 ただし、その瞳も声も冷たく、フラム家の者を歓迎していないことが伺い知れた。
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