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フラフラとまた暗い夜道を歩く。
ひと気のある場所ではまた警官に見つかるかもしれないから、道を選んだ。
だいたい、ひとがたくさんいるところでは、果たせない。両親の後を追う事は出来ない。
しばらく歩いているうちに、たどり着いてしまった。
そして、見つけてしまったんだ。
"死ぬな 死ぬな 死んじゃいけない"
"苦しいときには 電話をかけて来い"
「……せんせい?」
足が止まる。
あの日の言葉に、止まっていた時が動きだす。
"君は 君は独りじゃないよ"
"どんなことでも 電話をかけて来い"
あの日先生は、ひとりひとりの名前を呼び、十円玉をくれたんだ。
今どき、十円って……携帯電話の時代なのにって、思ったけど。
この十円玉だけは、何故か財布に入れるのも躊躇われて、お守りみたいになって、僕のそばにあった。
緑色の狭い空間。
電話ボックスが、僕の目の前に。
近頃、電話ボックスなんてどんどんなくなり、当然使う事もなくなって、意識からも消えていた。
でも、まだあったんだ。
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