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右足と左足を交互に動かし、町中を眺めながら僕は、必死で頭の中を掻き回していた。
僕、とそう自分を呼んでいるんだから、性別は男だ。
名前は……なんだっけ、浮かばない。
歳は……ショーウィンドウのガラスに写る自分を見たかぎりでは、上に見ても高校生。映画館なら中学生料金で入れそう。なら、14から16くらいかな。
持ち物は……あれ、手ぶら?
いや、何か持ってる。それも右手にずっと硬くこぶしを握って、何かを持っている。その他には何もなくて、着の身着のままって感じだ。財布もない。携帯電話を持っていないのは、まだ中学生だからか、家に置いてきたのか、そもそも持っていないのか。
あまりに硬く握りすぎて指が開かない。僕の頭が指を開けと命令するのに、自由に動かない手指がなんだか気持ち悪い。
人通りを避けて少し細い路地に入ると、僕は左手を使って右手の指をこじ開けた。
下を向いた瞬間、視界がずれた。と、思ったらどうやら僕は眼鏡をかけているようだ。
視力は悪いらしい。
左手で眼鏡の位置を直してから、また右手の指を一本ずつ開いていった。
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