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暗くなっていく空を、歩道の手すりに寄りかかって眺めていた。町中では明るすぎて星なんか見えなくて、空はただただ暗かった。
手のひらに乗せた十円玉は、普通の十円硬貨で、ギザ十ですらない。
車道を走る車のライトが次々と僕の姿を照らしては、通りすぎていく繰り返し。
歩道を歩く人の姿は徐々に減り、帰宅途中の会社員みたいな人がよく目につくようになった。
そしてとうとう、声をかけられてしまった。
「君、ちょっといいかい?」
自転車に乗って近付いてきたその男は、警察官だ。お巡りさんだ。
「中学生くらいかな? もう19時になるけど、そろそろ家に帰ろうか」
にこやかに話しかけてくるけど、なんだか気持ち悪かった。
優しそうな顔をしているけど、その裏ではきっと面倒臭いとか思っているように感じた。だから、僕は。
「大丈夫です」
それだけ言って、逃げた。歩いていた道を、走って抜けた。
歩いている人にはぶつからない。
僕は足が早い。
お巡りさんは、自転車に乗って追いかけてきた。
僕の体の中で、心臓というポンプが、爆発しそうなくらいに血液を吐き出している。
逃げるのなんて、嫌なんだ。
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