うまい棒も買えないけど、価値のあるもの。

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……そうだ、僕はこうやっていつも走っていた。 いや、逃げていた。 何かから、逃げていた。 "なぁなぁ、お前、足速いなぁっ! 羨ましいぜ" そう声をかけられたのは、体育時間だ。 "ちょっとさ、手伝って欲しい事があんだよ" そう言われて放課後に呼び出された。仲間が数人ついてきて、グループなのがすぐにわかった。 連れていかれたのは近所の駄菓子屋。子供の頃よく行って、店番のおばあちゃんがうとうとしてるのを見ると、危なっかしくて無邪気にも"僕がおばあちゃんの代わりにお店を守らなきゃ"なんて思ったりした。 その駄菓子屋で、菓子をいくつか取ってこいと言われた。 もちろん断った。断ったら殴られた。蹴られた。 あの時も今みたく、心臓が破裂するんじゃないかと思うくらいにバクバクと音を立てて、心音でおばあちゃんが起きるんじゃないかと心配になった。 今思えば、おばあちゃんが起きてくれればあんな事……出来なかっただろう。 僕は数十円分のお菓子をそっと掴み、店を飛び出した。 僕にそれをやれと言ったのは同級生で、クラスでもリーダー的な存在だった。 そいつは、何度も僕に同じ事をさせた。
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