アイデンティティさらし The Murder of Common Identity

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 しばらくあたしは言葉が出なかった。その説明で納得できたからだ。もしかしたら、彼と何度かレジで顔を合わせているかも。特徴的なルックスじゃなかったし、異性としてことさら意識してなかったので、はっきり覚えていなかったのだ。 「──以上、証明終了」  そう黒衣探偵ペルソナは宣言するようにつぶやくと、纏った黒い布をマントのごとく颯爽(さっそう)(ひるがえ)した。 「わたくしの推理講義を聞いて人は時に、わたくしをペルソナ教授とも呼ぶのです」  うちの大学にこんな教授いたっけ? 「お礼はそのプリンで結構」 「あ、えっ」  新たに湧いた疑問を質すヒマも申し出を断るヒマもなく、右手に持っていたヴィニール袋ごと、バイト上がりに買った大好物のプリンをさっと奪われてしまった。 「アデュー」  颯爽と片手にプリンをかざし、黒衣探偵ペルソナは闇の中へ、フェイドアウトするように消えた。  To be continued.
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