アイデンティティさらし The Murder of Common Identity

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 大学に行った日の夜、コンビニ帰りのこと。賑やかな駅周辺からだんだん離れていくにつれ、めっきり人通りも寂しく、街灯も少なくなった。もう夜中の10時過ぎだし、あたしみたいな女の子の独り歩きはちょっと怖いものがある。別にあたしはぜんぜん美人でもカワイイ系でもない、ごくごくフツーの女子大生だけれど。  今日はスカートもミュールも履かず、ジーンズにスニーカーだったから、早足で暗い路地を歩いた。早く帰ってプリン食べよ、とコンビニで買った大好物の焼きプリンをヴィニール袋越しに眺め、お気に(、、、)のグリッターバッグを肩にかけ直した。とそのとき、人の気配を感じた。なんとなく後ろをチラッと見る。少し離れたところに、ぼーっと男が一人立っていた。  気にしない気にしない、そう自分に言い聞かせ先を急ぐ。たまたま目に入っただけ。  でも、あたしの跡をついてくるように、歩調を合わせるように、後ろのほうでザザッザザッと微かに足音がする。  気にしない気にしない、たまたま帰宅方向が同じなだけ。  自宅マンションが見えてきた。エントランスまでもうすぐ、というところで突然、背後から男のか細い声がした。
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