アイデンティティさらし The Murder of Common Identity

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「初めまして。わたくしが黒衣(くろご)探偵ペルソナです」 「てか、あなた、誰ですか」  あまりの堂々とした不審者っぷりに、恐怖を通り越し、あきれて思わずストレートに訊いてしまった。失礼かも、と気遣う間もなかった。 「あなたの疑問を解いてさしあげましょう」 「いや、だから誰なんですか」 「それが疑問の一つならば、解答ははっきりしている。わたくしは黒衣探偵ペルソナです」  頭のてっぺんから足の先まで、全身大きな黒い布で覆っている。わずかに目元が覗いているだけだ。だから黒衣(、、)なのだろうか? 「探偵って……」 「黒衣探偵はこの世界に存在しない。しかし、この世界を謎解く役割を仰せつかっているのです。いわば、()というパースペクティヴで描かれた世界(、、)という絵画作品における消失点なのです」  からかわれているの? それとも新手の変態? ヴェールみたく素顔を隠しているし、周りが薄暗いせいか、目元からは全く表情は読めない。 「あ……はぁ……」 「あなたの疑問は、わたくしが黒衣探偵ペルソナであることではないはず。先ほどの不審な男が誰なのか、のはず」  よっぽどお前のほうが怪しいわっ! とツッコミたいのは山々だったけれど、なんか危なそうだし、様子見で、グッとガマンした。 「じゃ、誰なの」 「彼が誰かは知らない」 「えっ」 「あなたにも名乗らなかったのに、わたくしが彼を知っているわけないじゃないですか。しかし、彼があなたを知っていることが問題なのです」  どうやらワイセツブツを開陳する気はないようだったので、とりあえず安心した。あたしがホッとして黙っているのをいいことに、調子にノって黒衣探偵ペルソナ(!?)は勝手に話しはじめた。
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