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むかーし、ある山になあ、狐の群れが住んでおったんじゃ。
その山は、この辺りの小山と違うてずうっと大きくてな、狐たちの食べ物になる小さな動物もおったし、木の実や果物も、たくさんたくさんあったそうじゃ。
しかし、狐たちにはひとつだけ悩みがあってな。
なんと、こわーい狼の群れも、この山を住処にしておったんじゃよ。
狼たちはいつも腹ペコじゃったからのう、狐を捕まえて食ってしまうことも、少なくはなかった。
中でも特に恐ろしいのが、群れで一番大きな、灰色の狼じゃ。
その〝灰色〟はなあ、何を食ろうて育ったのか、身体は他の狼の三倍もあってなあ、もちろん、食べる量も三倍、牙の長さは、かるく三寸を超えていたそうな。
そんな灰色が狐を捕まえては食い、捕まえては食ってしまうもんだから、ある時、どうにも困った狐たちは、覚悟を決めて、狼の群れのところまで行って訴えたんじゃ。
「狼王たる灰色の君よ。我ら狐はこのままでは滅びてしまいまする。これからは、鼠や兎を日ごと五十匹、貴君の群れに献上いたしますゆえ、これ以上は狐を狩らんで貰えませぬか」
「なるほど。すると俺たちは、狩りをせずとも楽に生きていけるということだな。……しかし、餌が毎日五十匹では、群れ全体が腹一杯になるには少なすぎる。倍の百匹にしろ。それから、俺は狐というやつが大好物なのだ。最後に一匹、うまい狐を食いたい。その二つが出来るなら、お前らの言う通りにしてやろう」
灰色の口から滴るよだれを見て、狐たちは震え上がった。
すぐに答えることができなかった狐たちは、どうにかお願いして、一晩だけ待ってもらうことにしてなあ。
たくさんたくさん、話し合ったんじゃ。
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