デジタルイラストを人に“あげる”ってどういうこと?

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 デジタルイラストの話に入る前に少しお付き合いください。  デジタルに限りなく近いアナログの描画手法があります。 それは版画です。  では版画の価値とは?  実は版画もデジタルイラストと同じように価値の有無を議論されてきた経緯を持ちます。  一般に版画は摺った枚数が少ないほど、一枚あたりの価値が高いとされますが、それでも初版に一番価値があります。  版画は言わば印刷なので、一枚の板で何枚でも摺れると思われがちですが、実際には刷れる枚数に限界があります。  素材にもよりますが、どの版画の板もいずれ目詰まりを起こしたり磨り減ったりして使えなくなってしまう運命にあります。  そして、浮世絵なんかは初版が売れて足りなくなったら本と同じように再版をするわけですが、製作者が初版ほど関われないので再版は初版よりクオリティが落ちています。  浮世絵でなくとも版画においてオリジナルとは基本的に、制作者が関わった部数だけで、余白に手書きのサインが入っていたり、通し番号が振ってあるもののことを指します。  このように、“複製できるけどオリジナルが存在する”という表現形態の前例は、美術の歴史を見てみるとちゃんとあるんですね。  でもデジタルイラストは何度コピーしても劣化しないよ? と思った方、鋭いですね。  劣 化 さ せ る ん で す よ 。  作り手側がね。
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