1998年・夏…

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7月の半ば、日射しが突き刺さる様な季節。 小汚いビルの日陰に俺はいた。 集合時間は11時、今は11時15分、待ち合わせの相手はまだこない。 電話をしても留守電。 『ちっ』 舌打ちの一つも出るのは当たり前だ。 昨日の夜、『お前、絶対遅刻すんなよな!』と言ったのはアイツの方なのに… 遅刻はマズイと思って9時30分には来てるのに… 熱中症で倒れそうだ… ふと、見ると、目の前の信号を、足早に渡る二人組。 (それっぽいな…) 二人組は、俺の目の前を横切る。後ろを歩いてた背の小さいのが、俺を見て軽くお辞儀をする。俺もお辞儀を仕返す。 二人は案の定、そのビルの地下へと入って行く。 (オーラが見えねぇな…) と、その時、俺の携帯が鳴りだした。突然だった為、相手も見ないで電話に出た。 『ハイ、もしもし』 『あ、コーちゃん?今どこ?』 待ち合わせの相手だ…イラっときた 『お前…』 『わかってるって、大丈夫だよ、時間はまだ余裕だから』 まったく反省の色が見えない… 『そーゆー問題じゃねーだろ!ネタ見せの前に合わせるっていったじゃねーかよ!』カッとなって怒鳴った。 『そんな怒んなよ~、ネタ見せだって、13時だぜ、すぐ行くから待ってろって』 それだけ言うと、一方的に電話を切った。 しょーがねー奴だな… ホントにしょーがねーと思ったのは、12時50分に来たことだ。 『余裕、余裕』と言って笑顔で現れたそいつを、本気で目潰ししてやろうかと思った。 そいつは、『じゃあ行くべ』と言って、ビルの地下へ降りて行った。 大丈夫か?…正直不安だ…
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