29 リュカとルネ

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「俺とルネはその点、もともと親友同士だった。だから、家族としてはうまくやっていたと思う。お互い心に秘めていることはあっても、ルネとの暮らしは――俺はそれなりにけっこう楽しかったがな」  それまでずっと窓の方を見ていた伊波は、何を思ったのか、正面からオレを見た。 「俺が、現世でおまえと距離を置いていたのは……おまえを自由にしてやりたかったからだ」 「自由?」 「長い間、おまえはずっと自分を殺して生きてきた。もしおまえが、家や周囲に縛られることのない環境に生まれたら――好きにさせてやりたいと思った」 「……」 「そうなったとき、おまえが誰を選ぶのか……答えはだいたいわかってはいたが、正直それを試したい気持ちもあった。
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