29 リュカとルネ

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 オレは思わずイスから立ち上がった。 「どうしてオレたちが、伊波のことを忘れなきゃいけないんだよ!」 「おまえは結局、俺を選ばなかった。その上で、これ以上中途半端なつきあいを続けるつもりはない」 「そんな……」  恋人ではないけれど、それでも、オレにとって伊波が大切な存在であることに変わりはない。  全部忘れてしまうということは、最初から出会わなかったのと同じだ。  自分の中から、伊波に関わるすべての思い出が消えてしまう。そう考えるとゾッとしたし、絶対にイヤだった。  だけど。伊波の気持ちを思うと、オレはそれ以上何も言うことができなかった。
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