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「伊波のことを忘れたくない。でも……どうしてもそうしなきゃいけないのかな」
「ああ」
「その、無理に忘れなくても――なるべく会わないようにすればいいんじゃ……」
伊波は小さく、しかしはっきりと首を横に振った。
「だけど……」
さらに言葉を続けようとして――伊波の表情からその決意の固さを感じて、オレは口をつぐんだ。
伊波がいったんそう言い出したら、オレなんかがもう何を言っても無駄なのはわかっていた。
言われたとおりにするのは本当につらいし、できることならそうしたくはないけど。これまで伊波がオレにしてくれたことを考えると――今、伊波の望みを受け入れることが、オレにできる唯一の恩返しなのかもしれない。
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