30 いつかの想い

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「基本的にはそうだ。まわりの人間に対する感情まで消えてしまうことはないと思うが、記憶の薄れ方には個人差があるからな。用心しておくに越したことはない」 「う、うん……」 「一緒に暮らし始めても、単なるルームメイトになってしまわないように気をつけろ」  オレがうなずくと、伊波はちょっと悪戯っぽい目になって言った。 「おまえたちが男と女なら、もし記憶がなくなっても、一緒に住んでいれば、そういう関係だということは自然にわかるだろうが――男同士だとそうはいかないだろうからな」 「そ、そうかもしれないけど。じゃ、どうすれば……」 「簡単なことだ。部屋の中を、誰が見ても恋人同士が住んでいるとわかるような感じにすればいい」  ってことは――
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