30 いつかの想い

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 ある日、バイトのために慧のマンションに行くと、オフィスの方にはいつも明かりがつけてあるのに、その日はなぜか明かりが消えていた。  何か用事で出かけてるのかな?と思ったが。寝室の方から人の気配がしたような気がして、ドアをそっとノックしてみる。 「慧、オレだけど……いる?」 「あ──はい」  中から聞こえた声が、いつもと感じが違うなと思っていると、やがてゆっくりとドアが開き、慧が姿を現した。  別に機嫌が悪い――ってわけじゃないみたいだけど、慧の眉間には珍しく深いシワが寄っていた。  おまけにやけにまばたきが多くて、なぜだか目を大きく開けていられないようだった。 「慧! どうしたんだ?」
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