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だから、自分に気をつかってそんなに落ち込むことはない――伊波はそう言おうとしたんだろうか。
「おまえも、もうある程度のことは知っているだろうが、俺は、前世でもハドラスだった。俺自身、子供の頃からそのことは自覚していて、常にハドラスらしくふるまわなければならないと思っていた」
「……」
「俺は、ハドラスであることに誇りを持っていた。餓鬼や悪鬼と戦う者は、ただでさえ普通の人間とは違う運命を背負っている。その中でも、俺はさらに他の誰とも違っていたが、自分がまわりの者と違う運命に生まれついたことを、恨んだり悲しんだりしたことは一度もない」
伊波が、こんなふうに自分のことを話すのは初めてだ。オレは黙ってその言葉に聞き入っていた。
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