29 リュカとルネ

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ジュストがルネの家で働くようになってからは、あいつも一緒に――俺もルネも、大人たちの前では「いい子」で通っていたが、3人でよく悪さもしたな」  そのときのことを懐かしむように、伊波は珍しくかるい笑い声をたてた。 「村の子供はみんな、俺の目をまともに見ることができなかった。俺は、奴らのおどおどした上目づかいの視線や、媚びた愛想笑いが嫌いだったが――ルネだけはいつも、俺の顔を正面からまっすぐに見た。きついことも遠慮なくぽんぽん言う奴だったから、それがきっかけでケンカになることもあったが、でも俺は、そんなルネの物言いが嫌いじゃなかった」 「……」 「ただ、俺はそのことだけでルネを気に入ったわけじゃない。九鬼はおまえのことを、単純な奴だと思い込んでバカにしていたようだが、俺はそうは思わない。
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