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私は今、幼い頃よく母代わりであるシスターに読み聞かせてもらったおとぎ話をふと思い出した。
両親は私が産まれてすぐ事故で死んでしまい、その後孤児院で育てられた。
私が両親からもらったものは命と名前と形見のペンダントだけ。
でもそれが私の最大の宝物。
「ルナ!支度は終わったの?早くしないと遅刻するわよ!」
そう、これが私の名前。
そしてこの声の主はシスターのライラさんだ。
「やっば!まだ支度終わってない!」
初めて袖を通す制服の着心地を噛み締める暇もないままカバンとペンダントを身に付けライラさんの所に行った。
「ごきげんよう、シスターライラ」
「ごきげんよう、ルナ。制服似合ってるわ!まだ小さかったあなたがこの孤児院に来たのがまるで昨日のようなのに…」
「シスター!…行ってきます」
「えっ!ああ、そうね気をつけて行ってらっしゃい」
私はライラさんの声を遮るように言った。
危ない危ない、ライラさんは一度感傷的になると、なかなか話が終わらないんだから。
ライラさんが感傷的になるのもわからなくはない。
私が、この孤児院に来てから15年もたつ。
今が15歳だから赤ちゃんの頃からこの孤児院に住んでいるいわば古株だ。
「ほら!ルナお姉ちゃんが学校に行きますよ。みんなも行ってらっしゃいって言いなさい。」
「「ルナお姉ちゃん!行ってらっしゃい!」」
私は、妹と弟たちに応えるように手を振り学校へ急いだ。
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