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Ⅱ
「秀作、洗濯を手伝っておくれ。」
「今行きます。」
幕府が倒れ近代化が徐々に進む中で、上野家は急速に没落していった。今では女中を雇う余裕もなく、親子四人で細々と暮らしている。
町で大火が起こったのは、そんな時だった。
「助けてえええええ!」
「火に囲まれた!」
「中に子供が…!」
「痛い、痛いよお…」
「嫌あああああああああああ!」
悲鳴と怒号が鳴り響く。
「あれ…おっかさん?おっかさん!」
「早く、こっちだ!」
知らない男の手が私の手首を掴んだ。
「でもおっかさんがいない!」
「…覚悟はしておけ。行くぞ!」
目を覚ますと、橋の下にいた。
「目、覚めたか?」
「ここは…?」
「月橋の下だ。火は収まったみてえだ。兄ちゃん、一旦家へ…」
男が言い終わらないうちに、私は走り出した。
家は燃えて無くなっていた。私は近くにいた女に話しかけた。
「すみません、ここに住んでいた上野という者を知りませんか?」
「…皆死んだよ、火に呑まれて。」
そう言って、女は歩き去った。
焼け野原をとぼとぼと歩いていると、ぽつんと一軒だけ残った納屋を見つけた。母屋は全焼しているにもかかわらず、傷一つ負っていなかった。どこか惹かれて中に入った。
「埃っぽいな…」
長年使われていないのだろうか、一歩踏み出す度に埃が舞った。奥へ進むと、埃を被っていない綺麗な箱を見つけた。
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