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Ⅴ
手紙を投函してから数か月後、私はとある居酒屋へ行った。満席だったらしく、知らない男と相席になった。話を聞くと、塾の講師をしているらしい。
会話がひとしきり盛り上がった後、お開きとなった。
「ありがとうございました、今日は楽しかったです!」
「こちらこそ…そういえば名前を伺っていませんでしたね。」
彼は言った。
「中村陽、です」
「この前居酒屋に行ったんですよ。その時たまたま外国人の方と仲良くなって。去り際に名前を聞かれて、まあ名乗ったんですよ。そしたら相手が晴れやかな顔になったから理由を聞こうとしたんですけど、すぐに行ってしまって。あの人の名前、何だったんだろう…」
「そこですか!?」
生徒の鋭いツッコミで教室がどっと沸く。彼の講習にはこうした雑談が付き物である。そこも、人気の高いポイントと言えるだろう。
「先生、もう一回その居酒屋に行ってみれば?」
「確かに。」
教室の方々から同意見が飛んだ。
「そうだね、そうしてみようかな。…あ、つい話しすぎてしまいました。(2)の問題は…」
今週中にまた展覧会へ行こう。手紙が来ているかもしれない。
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