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相合傘
ウチのクラスは、朝のHRの時、先生が今日の日直の名前を黒板の隅に書く。
日直は、出席順に男女がペアでやるので、隣同士に名前を書かれたというだけで無駄にひやかされることもある。
今日だって、いつの間にか名前の上に相合傘が書かれていた。
こういうのは下手に反応すると面白がられるから、気づいても無視。『お二人さん』みたいなことを言われてもノらずに無視。
おかげで無事放課後になった。
みんなが帰って行く中、細かな雑用を片づける。日直だから仕方ないけど、面倒なのよね。
日誌を書いて、教室内におかしな点はないかチェック。黒板や黒板消しも綺麗にして…あれ?
時間短縮のために、アタシが日誌を、ペア相手が黒板の方を担当していた。でも顔を上げると、まだ日直の名前が消されていない。落書きの相合傘も。
「もー、何してんの? 早く片づけないと帰るの遅くなっちゃう…」
「なんか、消すのもったいないなと思って」
「な、に、言ってんのよ!」
とりあえずそれしか言葉が出なかった。しかも多分、それを口走っている時の自分は真っ赤だったと思う。…だって、同じことを考えていたから。
結局、相合傘は名前ごと消したけれど、アタシ達はこの日から単なるクラスメイトじゃなくなった。そして新しい関り方のまま、もう三年が経っている。
あれから黒板に相合傘を書かれることはなかったけれど、一本の傘を実際に分け合って歩いたことは何度もある。そんな二人の関係は、多分これからも続くだろう。
相合傘…完
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