終章

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月明かりに照らされた貴方は、綺麗なその眼を閉じている。 キリストのように、十字の板に磔にされて。 つかの間の夢を見ているのかしら。 早く起きて、王子様。 起こすのはお姫様の役目じゃないでしょ? 早く起きて、早く起きて、 その眼が見たいの。 貴方が驚く顔が見たいわ。 貴方の嫌いだった赤ワインを飲みながら、 少しだけおしゃべりしたいの。 早く起きて、早く起きて、 その声が聴きたいの。 どんな罵声でも、聴くにたえない叫びでも、 少しだけ貴方に時間をあげる。 早く起きて、早く起きて、 時間が無いわ。 貴方の罪が十字と共に静かに海に消えるまで、 あと少し。 貴方とわたし、二人だけの秘密の場所。 よく二人、寄り添って、静かに海を見たこの場所で。 ねぇ、キスをするには少し遠い海の上の貴方。 わたしが愛した貴方は、きっと悪魔に食べられちゃったのね。 わたし、ずっと待っているから。 貴方が地獄に堕ちるその時を。
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