0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
月明かりに照らされた貴方は、綺麗なその眼を閉じている。
キリストのように、十字の板に磔にされて。
つかの間の夢を見ているのかしら。
早く起きて、王子様。
起こすのはお姫様の役目じゃないでしょ?
早く起きて、早く起きて、
その眼が見たいの。
貴方が驚く顔が見たいわ。
貴方の嫌いだった赤ワインを飲みながら、
少しだけおしゃべりしたいの。
早く起きて、早く起きて、
その声が聴きたいの。
どんな罵声でも、聴くにたえない叫びでも、
少しだけ貴方に時間をあげる。
早く起きて、早く起きて、
時間が無いわ。
貴方の罪が十字と共に静かに海に消えるまで、
あと少し。
貴方とわたし、二人だけの秘密の場所。
よく二人、寄り添って、静かに海を見たこの場所で。
ねぇ、キスをするには少し遠い海の上の貴方。
わたしが愛した貴方は、きっと悪魔に食べられちゃったのね。
わたし、ずっと待っているから。
貴方が地獄に堕ちるその時を。
最初のコメントを投稿しよう!