お守りの石

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お守りの石

 おばあちゃんがいつも持っていたお守り袋。  色褪せて、書いてある文字も読めない。でもとても大切にしていたから、中身は何かと尋ねた。そうしたら、ちょっと考えるような顔をした後、おばあちゃんはお守り袋の中身を見せてくれた。 「わぁ!」  つい声が出る。そのくらい、中身は以外で綺麗だった。  直径一センチ程の小さなガラス玉…ううん、違う。これはガラスじゃないと、子供心にも判った。  最初は真っ赤に見えた。でもよく見ると濃い部分や薄い部分がある。綺麗にグラデーションになっている部分もあれば濃淡か入り乱れている箇所もある。  見る角度だったり光の加減だったりで、くるくる表情を変える赤い宝石。  私はすっかり見とれてしまい、欲しいとおばあちゃんにおねだりした。でも返事は『あげられない』だった。 「ごめんねぇ。今はまだあげられないの。〇△ちゃんが大人になったら、いつかはこれを受け取ってもらうことになるけれど、今はまだダメなのよ」  いつかは私のものになる。それは判ったけれど今すぐでないことが残念でたまらなかった。だから私は、その夜こっそりと、おばあちゃんの荷物の中からお守り袋を抜き取ったのだ。  強引に奪い取ろうと思った訳じゃない。ただ、せめて一晩、この綺麗な赤い宝石を手元に置いておきたかったのだ。  でも結局、その夜からずっと、おばあちゃんのお守りは私の手元にある。  あの夜、理由の判らない失火により、我が家は家族もろとも焼けてしまった。  生き残ったのは発見が早かった私一人。おばあちゃんもおじいちゃんも両親もみんな死んでしまった。
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