僕は自分が特別だと思っている

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「ずっと待ってるから」  画面の中の美麗なグラフィックの彼女は言った。そう、それはいくら美麗でも、ただのグラフィック。ギャルゲーに過ぎない。もしかしたら、オッサンのプログラマーが、こうすりゃモテないオタクが喜ぶだろうと、プログラムした、ただのグラフィックなのだ。  僕は、そう気づいてから、ギャルゲーにハマれなくなった。プログラマー以下、ゲーム製作者に見透かされているような気がして。所詮、ただのゲーム、向こうだって商売なのだ。  そんなことは百も承知のはず。その上でゲームとして楽しんでいたはずなのに・・・。いつからか僕は、そんなゲームにハマっている自分が空しくなっていたんだ。  「ずっと待ってるから」 そんな言葉をかけてくれる特別な相手など、もちろんのことリアルにはいやしない。二次元からいくらそんな言葉をかけられても、もう萌えやしないのだ。  飢えていた・・・、何もかもリアルに飢えていた。自分を特別だと思ってくれる、リアル美少女に。そんな美少女がいるわけないのは、わかっていてもだ。そう、自分を特別だと思ってくれる、そんな異性の存在に憧れていた、夢を見ていた。  僕は自分が特別だと思っていた。今は何もない。しかし、やれば出来る、本気を出せば凄いんだ、と何の根拠もなく思い込んでいた。いつか本気を出せば、と。いつでも本気を出せるんだ、と。  だが、本気を出したことはなかった。その気になれば、いつでも本気になれる。だから、今じゃなく明日でも本気を出せる。そう思って、何もしていなかった。  僕はモテなかった。そんなモテない僕でも、いつか美少女が惚れてくれる、そんな女の子が現れる。そういう少年マンガみたいなシチュエーションを、本気で夢見ていた。そう信じて疑わなかった。  いつか報われる日が来ると、全てが変わると、何の努力もせず、来るはずのないそんな日を待ち続けていた。自分は凡人じゃない、人とは何か違うはず、そう思い込んでいた。  ギャルゲーにも飽き、そんな退屈な日常に奴はやって来た。ある日突然、何の前触れもなく・・・。  
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