残念な未来

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そこは、テレビとDVDプレイヤー、衣装ケースが幾つか、そして本棚が一つある、六畳くらいのワンルームだった。  「ここが俺の部屋だ。」  オッサンは、言った。その部屋にはベッドもなく、隅の方に畳まれた布団がある。僕は愕然とした。42歳の僕は、こんな部屋に住んでいるのか。僕の未来はこんなものなの・・・。  「俺、つまり未来のお前は、35歳で家を出る。」  そうオッサンは言う。一人暮らしはしているのか。  「今から俺は仕事に行く。お前はついてこい。そして、俺の姿、つまり未来のお前の姿をよーく見とけ。」  オッサンはそう言ったが、ついてこいと急に言われてもなぁ・・・。  「大丈夫、お前の姿は誰も見えない。」  そのオッサンの言葉に僕は驚いた。どうしてと尋ねても、それは答えられないと教えてくれなかった。  オッサンは部屋を出た。僕は後をついていく。本当に僕の姿は誰にも見えないのか?。外から見ると、部屋はごく普通のワンルームアパートの1階だ。  アパートの前の道を、オッサンは真っ直ぐ歩いていく。途中で、人とすれ違った。狭い歩道なので、体がギリギリ当たるか当たらないか、程度の間隔。その人は、オッサンには軽く会釈してすれ違ったが、僕には目もくれない。どうやら、本当に僕の姿は、オッサン以外には見えないようだ。 電車に乗って1時間程の、郊外の工場に着いた。27歳の僕が働いてる工場とは違う工場だが、やってることは軽作業で、今の僕が働いてる仕事と、「軽作業」ということではさほど違わないように思える。  42歳でも僕は、工場で軽作業をしているのか。非正規でワーキングプアであろうことは、容易に想像出来る。27歳の僕と違うのは一人暮らししていることだけだ。  オッサン、つまり未来の僕は、これを見せたかったのか。景気は回復するはずもなく、今より社会保障も弱くなっている。このままじゃ待ってる未来は、変わらないぞ、と。  
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