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ついがっつきたくなるのをぐっと堪えて、丁寧に、優しく。
柔らかい彼女の唇を食んで、舐める。
指で手の肌を撫でながら、チェーンと肌との隙間に割り込んだ。
ちゅ、と水音が弾んで唇が離れる。
息を乱した彼女と俺の唇の間で、熱の籠った吐息が混ざった。
「好きです、慎さん」
「……ん」
「好きです」
「わ、わかったから」
瞼と頬と、耳の近くを啄みながら「好き」を繰り返す。
しつこいかな、とわかっていても。
あまり口にはしない彼女の分も、たくさんの愛を囁く。
俺が、慎さんが贈ってくれたキャンディに込められた言葉に気付くのは、少し後になってからだ。
テレビのバラエティでホワイトデーのお返しには、お菓子によって其々意味があると、その時始めて知った。
そういう番組は、もっと事前に放送しておいて欲しい。
うっかり生マシュマロを贈らなくて良かったと、心の底からほっとした。
【ホワイトデーには愛の言葉を】
END
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