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薄く白っぽいピンクの桜の花びらが風に舞っている。
校門近くの桜並木から、いつ止むとなく降ってくる。
春は好きになれない。
ゆるゆるとした上り坂をのぼりきると、これから通うことになる美桜台(ビオウダイ)高校の校舎が見えてきた。
俺と同じようにこれからこの学校に通う同級生。そしてその親らしき大人たち。それが、ぞろぞろと校門の中に入っていく。
俺も、本当だったら、親父が一緒に来てくれるはずだったけど、急な出張で行けなくなり、母も、ずっと入院しているから、一人で来ることになってしまった。
一人でいることには慣れているから、あまり気にならなかったけれど、人の楽しそうな様子を見ると、少しだけ寂しい気持ちが湧いてくるのは、どうしようもない。
小さくため息をつきながら、校門に入ると、
「要」
優しく、俺の名前を呼ぶ人がいた。
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