1.始まりの春

31/33
2471人が本棚に入れています
本棚に追加
/381ページ
とても痛い視線を感じるのは、俺だけじゃないはず。隣に座っていたヤスも、その視線に気づいているのか、眉間にシワをよせている。 「あ、でも。」 「要。鞄もって。」 有無を言わせずに、俺の二の腕を持ち上げる。強引だけど、それに素直に身体が動いてしまうのは、この人だからかもしれない。 「ごめん、俺」 「ううん、気を付けてね。」 「佐合さんは任せろっ!」 むしろ、俺がいないほうがいいのか。 今更気が付く俺。 クスッと笑って"任せた!"と、ヤスと拳を重ねた。 「要。」 「あ、はい。」 鴻上さんは、"じゃあね。"と、ヤスたちに笑顔を送ると、そのまま俺をひっぱるように店を出た。
/381ページ

最初のコメントを投稿しよう!