1.始まりの春

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電車に乗り込んでも、しばらく無言の鴻上さん。機嫌が悪いのか、無表情でも、雰囲気でなんとなくわかる。 「・・・なにかあったんですか?」 あんまり無言の時間が居心地悪くて、聞いてしまう。 そんな俺に向ける視線は、なぜだか少しだけ、辛そうに見えた。 「・・・ゴールデンウィークって、何か予定あるの?」 「はい?」 「今度、交流試合があってね。もしよかったら見にこないかな。」 あの事件以来、剣道にかかわるのを止めてしまった。 アイツのことを思い出すようなことから、正直、逃げていた。 だから、試合場に行くことも嫌だった。 そんな俺に、それを求めるのか、と思うと、イラッとしてしまって、鴻上さんから視線をはずして電車の外の風景に目をやってしまう。 「・・・まだ、無理か」 「・・・・・・・・・」 「でもな。要。」 肩にのった鴻上さんの手が、温かい。 そして、俺のことを本当に心配してくれてるってわかる声。
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