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電車に乗り込んでも、しばらく無言の鴻上さん。機嫌が悪いのか、無表情でも、雰囲気でなんとなくわかる。
「・・・なにかあったんですか?」
あんまり無言の時間が居心地悪くて、聞いてしまう。
そんな俺に向ける視線は、なぜだか少しだけ、辛そうに見えた。
「・・・ゴールデンウィークって、何か予定あるの?」
「はい?」
「今度、交流試合があってね。もしよかったら見にこないかな。」
あの事件以来、剣道にかかわるのを止めてしまった。
アイツのことを思い出すようなことから、正直、逃げていた。
だから、試合場に行くことも嫌だった。
そんな俺に、それを求めるのか、と思うと、イラッとしてしまって、鴻上さんから視線をはずして電車の外の風景に目をやってしまう。
「・・・まだ、無理か」
「・・・・・・・・・」
「でもな。要。」
肩にのった鴻上さんの手が、温かい。
そして、俺のことを本当に心配してくれてるってわかる声。
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