1.始まりの春

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「いつまでも、逃げていられないぞ。」 言われなくても、頭ではわかってる。 最近は、よっぽど大柄な男でなければ、恐怖感がわかなくなってきてる。たぶん、俺自身の背が伸びてきて、自分と大差ないと感じられるようになってきたから。 それは、小さい頃はすごく大きいと感じていた鴻上さんが、今は俺より少しだけ大きいだけだってことに気づかせてくれたから、というのもある。 それでも、アイツがいた、アイツもいた、試合場には入れない。 「・・・試合場に近づかなくていいから。」 ギュッと肩を掴まれる。 「武道館の入口からでもいい。俺のために応援に来てくれないか。」 大人っぽくて強い人というイメージで、いつも自信があるように見えていたのに、その声は少し切羽詰まって聞こえた。 思わず、窓の外を見ていた俺は、隣に立つ鴻上さんの顔を見た。 鴻上さんの顔は、とても、優しく微笑んでいた。 ・・・鴻上さん?
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