2465人が本棚に入れています
本棚に追加
/381ページ
鴻上さんの言葉が、ずっと心にひっかかっていた。
"俺のために応援に来てくれないか。"
俺なんか応援しなくたって、鴻上さんみたいなカッコイイ人を応援してくれる人なんて、たくさんいるのに。
それでも、あの時の声が、何度も頭の中で繰り返す。
そして気が付けばゴールデンウィークに突入していた。
母が入院する前は、両親のどちらかの実家に顔を出しにいったけれど、今年は親父も忙しいらしくて、その余裕もない。俺一人でわざわざ行くのも億劫で、外出するのは母の見舞いに行くこと以外では、ほとんど家でゴロゴロしていた。
だから、別に俺自身は忙しいわけじゃない。
鴻上さんからは、交流試合の日程は聞いていた。
わざわざ隣県から遠征してくる相手校は、かなり強いという噂を聞く学校。そんな学校が、うちみたいな公立の高校に遠征だなんて、貴重な体験なのに違いない。
もう竹刀なんてしばらく手に持ってすらいないのに。
あの時の鴻上さんの顔を思い出した時、俺は家を出ていた。
最初のコメントを投稿しよう!