2.逃げたい。逃げない。

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鴻上さんの言葉が、ずっと心にひっかかっていた。 "俺のために応援に来てくれないか。" 俺なんか応援しなくたって、鴻上さんみたいなカッコイイ人を応援してくれる人なんて、たくさんいるのに。 それでも、あの時の声が、何度も頭の中で繰り返す。 そして気が付けばゴールデンウィークに突入していた。 母が入院する前は、両親のどちらかの実家に顔を出しにいったけれど、今年は親父も忙しいらしくて、その余裕もない。俺一人でわざわざ行くのも億劫で、外出するのは母の見舞いに行くこと以外では、ほとんど家でゴロゴロしていた。 だから、別に俺自身は忙しいわけじゃない。 鴻上さんからは、交流試合の日程は聞いていた。 わざわざ隣県から遠征してくる相手校は、かなり強いという噂を聞く学校。そんな学校が、うちみたいな公立の高校に遠征だなんて、貴重な体験なのに違いない。 もう竹刀なんてしばらく手に持ってすらいないのに。 あの時の鴻上さんの顔を思い出した時、俺は家を出ていた。
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