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今の俺に剣道が無理なの、わかってるくせに。
きっと、それは願望でしかないのかもしれない。
「・・・鴻上さんが、アイツに勝ったら、考えてみますよ。」
勝ってほしいけど。
そもそも対戦できるかわからないし。
だから、そう言ってしまうのかもしれない。
それをわかっててか、鴻上さんは笑う。
「・・・責任重大だな。」
降りる駅に着くころには、剣道部の人たちはいなくて、祥吾と呼ばれた人もいなかった。
「そうだ。今度の日曜日の午後、空いてるか?」
「・・・基本、暇なんで空いてますけど。」
「おばさんのお見舞いに行きたいんだけど。」
「・・・部活は?」
「午前中で終わりの予定なんだ。」
「そうですか・・・じゃあ、こっちに着く前に連絡ください。駅からバスなんで。」
「わかった。」
スッと俺の二の腕を掴む。
「気を付けて帰れよ。」
鴻上さんは優しく微笑むけれど、素直に笑顔になれない俺がいた。
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