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大和と呼ばれた彼は、運転席のドアを閉めると私たちの方へ近づいて来る。
ドクンドクンと私の胸が、張り裂けそうなくらい鼓動を早めた。
だけど彼は私と視線を合わせることもなく、無言のまま春日さんの娘さんの頭にポンと手を置くと私たちの横を通り過ぎて行った。
「ちょ! 大和!」
その呼びかけに振り返ることもなく、彼は春日さんが手招きしている事務所へと真っ直ぐ向かって行く。
拒絶された背中を見つめていた私に、春日さんの娘さんはやはり人懐っこい笑みを浮かべて話しかけてきた。
「すみませんね、アイツ、いつもあんな感じで無愛想なんです。
あ、いつも父がお世話になってます。春日真尋って言います」
「あっ、いえ、こちらこそ急な仕事なのに受けてくださってありがとうございます。
そこの事務所で受付済ませますので、どうぞ」
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