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それを心のどこかで嬉しいと思う気持ちと、これ以上彼に惹かれてしまいそうな不安感が入り乱れて、思わずポケットの中のクロスペンダントを握りしめる。
まるで何かに導かれたかのように、幾重にも繋がって行く彼との出会い。
急激に惹かれて行く自分をハッキリと自覚しているのに、それを必死に否定したがる自分がいるのは、ただ単純に不毛な恋がしたくないだけなのだろうか?
ぼんやりと液晶の画面を見つめたまま動きを止めていた私に誠也が話しかける。
「阿部さん? そろそろ仕事終わった?」
「あっ……はい、もう終わります」
「じゃ専務、今日は残業なしで二人ともあがりますけど。
戸締りは専務にお任せしていいですよね?」
「ああ、俺はまだ仕事が残ってるからな。
じゃ阿部さん、今日は本当にありがとう。
まだ少し早いけど二人ともあがっていいよ、お疲れ様」
まだ終業時刻まで5分あるのに。
まるで専務に追い出されたみたいに、私と誠也は事務所の裏にあるロッカールームに移動する。
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