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一瞬言葉に詰まってしまったのは、まだ心のどこかで誠也を信じたいと思う気持ちがあったからなんだと思う。
不動大和に急激に心惹かれながらも、誠也を好きだった自分がまだ消せなくて。
だから……不動大和への思いは吊り橋効果だと自分に言い聞かせているのも事実だ。
「もう一度言う。俺は遥香だけだよ」
「……っ……」
「今夜は遥香の家に泊まってもいいよね? 明日も一緒なんだし」
首を傾げながら絡めた指を弄ぶ唇は、どこまでも淫靡に私を誘う。
今の私は……この手を振り払う勇気なんてない。
たとえこれが偽りの言葉だったとしても。
私はもっと傷つくことでしか、誠也の手を振り解けない。
そんな気がした────。
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