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「それと、ここに携帯電話の番号を記入しておいてください」
私の言葉に、真尋さんは「はーい」と返事して受付用紙に記入を始める。
けれどその向こうからカウンターへと歩み寄り、受付用紙を手に取った彼と視線が絡む。
微塵たりとも揺れない彼の瞳。
やっぱり感情なんて全くなさそうな瞳が私を見下ろす。
「あの……」
昨日の御礼を言いたいのに、言い出す隙さえ見せない彼に結局これしか言えなかった。
「こちらに……記入をお願いします……」
消え入りそうな声で呟いた私の前で、彼はボールペンを取るとすらすらと走らせた。
『不動 大和 090-****-****』
不動……大和。
書き込まれて行く彼の個人情報を必死に頭の中にインプットしていた時、感じた視線にハッとする。
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