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荷物が積み上げられた倉庫の奥の方へと足を進めた私は、ようやく向坂部長のプラッターが止まっている場所を見つけた。
辺りを見回すと、荷物の陰から向坂部長の声が微かに聞こえて来て、私は声のする方へと近づいて行く。
しかしこの耳に聞こえて来た向坂部長の言葉に、驚いて足を止めてしまった。
「だけど阿部さんは辞めないだろう。あの子はドライバーを尊敬しているみたいだし、何よりもこの仕事が好きそうだもの。それに出庫管理に関しては専務からも信頼されているし」
「でも彼女が異動してくれないと、私はいつまで経っても倉庫管理から動けないんですよ。向坂部長から言ってくださいよ」
「いや、俺にそういう権限はないし。そんなに阿部さんが邪魔だったら、専務に配属を交換してくれって頼めば?」
「もちろん言いましたよ。だけど糸井さんが……」
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