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彼がさりげなくしてくれる優しさのひとつひとつが、この気持ちに拍車をかけるだけだ。
私が彼を好きだと言葉にしてしまったら、あの人はいったいどんな表情を見せるのだろう。
きっともっともっと彼は苦しむことになるのかもしれない。
そして真尋さんとの結婚になおさら踏み出せなくなってしまうに違いない。
虚しさだけを抱えながら立ち尽くしていた私に真尋さんが声を掛ける。
「遥香ちゃん、申し訳ないんだけど天ぷら揚げるのだけ手伝ってもらっていい?」
「あっ、はい喜んで!」
春日さんの作った流しそうめん台を絶賛している宇梶さんと背中を向けている大和さんの様子をちらりとだけ見て、私は真尋さんと共にキッチンへ向かった。
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