Act.12

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しばし佇んでいた彼は、車に戻ると無言のままサイドブレーキをおろして車をバックさせ駐車場から走り出した。 暗い山道を下りながら、私と彼の間には沈黙だけが流れ続ける。 どこか不愉快そうな彼の横顔が時折現れる街灯の光に照らされて、また泣きたい気持ちがこみ上げた。 どうして彼が不愉快な表情を浮かべているのかなんて嫌でも分かる。 自分が起こした事故の被害者の娘に好きですなんて言われたら、彼にしてみたら迷惑なだけだ。 私に対して後ろめたさだけを感じている彼がそれに対しての返事など出来るはずがない。 だけどたとえ迷惑だったとしても、今まで感情すら見せなかった彼がこうして不愉快そうな表情をあからさまに見せてくれることが嬉しいと思う私は、どうかしているのかもしれない。
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