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「そんな……」
「いまだに向坂部長は糸井さんを倉庫主任にしたくて説得しているけれど、阿部さんを一人にしたくないから断っているんじゃないかと佐俣って女は言ってた」
ショックが大きくて言葉なんて出て来なかった。
しかし彼は淡々と佐俣さんから聞き出した事実を言葉に並べて行く。
「あの女が君に冷たく当たるのは、糸井さんが自分を殺してまで守ろうとしていることに阿部さん自身が気づこうとしないからだと言っていた」
「…………」
「けれどそれ以上に糸井さんが自分のものにならないことが悔しくて仕方ないんだろう。これからも嘘を言って君と糸井さんの関係を揺さぶろうとして来ると思う。
だけど絶対にあの女の言う事は信じるなよ。
糸井さんはちゃんと阿部さんを大切に思っているみたいだから」
今にも声をあげて泣きたい気分になった。
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