Act.12

6/36

291人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
誠也がどんな思いで私を守ろうとしてくれたのか、その思いを今更知っても申し訳ない気持ちが色濃くなるだけだ。 大和さんと出会う前にそれに気づけていたら、私はあのまま誠也だけを見つめていたかもしれない。 だけど今、私が好きなのは……誠也じゃない。 街灯すらない山頂の駐車場。 私と彼の間には、やけに冷たく感じる風が吹き抜ける。 「もう一度、糸井さんとやり直せば阿部さんは幸せになれるのかもしれない。いや、幸せになって欲しいと俺は願っている」 隣から聞こえたその声で、必死に堪えていた涙腺が崩壊してしまった。 その様子に驚いたように彼は私を見つめる。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

291人が本棚に入れています
本棚に追加