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誠也がどんな思いで私を守ろうとしてくれたのか、その思いを今更知っても申し訳ない気持ちが色濃くなるだけだ。
大和さんと出会う前にそれに気づけていたら、私はあのまま誠也だけを見つめていたかもしれない。
だけど今、私が好きなのは……誠也じゃない。
街灯すらない山頂の駐車場。
私と彼の間には、やけに冷たく感じる風が吹き抜ける。
「もう一度、糸井さんとやり直せば阿部さんは幸せになれるのかもしれない。いや、幸せになって欲しいと俺は願っている」
隣から聞こえたその声で、必死に堪えていた涙腺が崩壊してしまった。
その様子に驚いたように彼は私を見つめる。
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