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必死にその場に流れる険悪な空気を払しょくしようと笑ってくれる真尋には感謝している。
だけどこの場所は俺にとっては死刑台と同じだ。
俺が橘大和であることを知る誠也がいて、俺が橘大和であることを知らずに純粋な瞳で見つめて来る阿部遥香がいる。
やはりもう加賀美の仕事は受けない方がいい。
そう心で思いながら俺は記入を終えた受付用紙を彼女に差し出した。
「あ……えっと、じゃあ不動さんは三番のターミナルから荷物が出ますので……」
「はい」
彼女から渡された構内の案内図と出荷指示書を手に俺は事務所を後にする。
これであとは積み込みさえ終わらせてしまえば、引き合わされた偶然は一時で終わる。
そんなことを思いながら俺は乗り込んだトラックをターミナルへと移動させた。
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