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「正直に話してくれないかな?」
やんわりと笑いながら問いかけられ、俺はもうとぼけることは無理だと思った。
「さすがおやっさんは勘がいいですね。そうです、彼女は俺が命を奪った方の娘さんです。
そして糸井さんは、後続車だった北関東ロジのトラックと正面衝突で亡くなった女性の息子で……俺と章吾の高校の時の後輩です」
包み隠さず打ち明けると、おやっさんは静かに頷く。
「糸井君の件は何となくそうじゃないかなって思っていた。
さっき事務所での挨拶の時、糸井君が不動君に向ける目がやけに冷たく感じたからね」
「……はい。それでおやっさん、申し訳ないんですが加賀美の仕事は今日で最後にしたいと思っています。
俺みたいな男が、たとえ仕事であっても来る場所ではないと思うんです」
頭を下げて言った俺を見つめていたおやっさんは、小さくため息を吐き出した。
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