Act.15 Side Yamato

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おやっさんとの話を終え、あのプレハブ事務所の前にトラックを止めた俺は覚悟を決めて事務所のドアを開く。 おやっさんの病気の件は、まだ真尋には言わないでくれと口止めされたのもあり、決して表情に出してはいけない。 しかしドアを開いたと同時に真尋が振り返るなり嬉しそうに声を掛けて来た。 「あ、大和。明日のイベントのバーベキューだけど、糸井さんと阿部さんも来るって」 「…………」 何も返事が出来なかったのは、カウンターの向こうの誠也が不敵な笑みを浮かべていたからだ。 きっと誠也は二人で一緒に相模原まで来ることで、阿部遥香が自分の女であることを俺に誇示したいのだろう。 「不動さん、明日はナイトシーン、しっかり見せて貰いますよ」 薄らと笑みを浮かべながら言って来た誠也に腹立たしさを感じていても、俺は全ての感情を飲み込んだ。 これから俺は嫌でも毎日この事務所に来るのだから、誠也とも分かりあわなければならないのだ。
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