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「まぁ……相模原まで距離があるから気をつけて」
「大丈夫! 湘南くらいまでなら行ったことあるし、阿部さんも一緒だし」
彼女が一緒という部分をやけに強調する誠也に失笑する。
高校の頃の誠也はひとりの女に固執するようなタイプではなかったのに。
けれどおやっさんがベタ褒めするくらいだし、それだけ阿部遥香という女性は魅力的ということなんだろう。
機転を利かせた真尋が誠也と電話番号を交換しているのを横目に、俺は伝票を出してもらおうと彼女に視線を向ける。
しかし、そこにあったのは真尋と仲睦まじく番号を交換する誠也を見つめる悲しそうな阿部遥香の瞳だった。
───ああ、そうか。
彼女も本当は誠也が好きなのか。
付き合っているのだから当然のことなのに、何故かそれが寂しく感じた。
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