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けれど今にも泣きだしそうなほど瞳を揺らす彼女に耐え切れず、俺は声を掛ける。
「あの……伝票を」
「あっ、すみませんっ」
慌てて視線を戻し、打ち出した伝票を封筒に詰める彼女の手が微かに震えている様に、俺の胸が息苦しさを感じるほどに締め付けられる。
君は今、幸せですか?
言葉に出来ない質問を必死に飲み込む俺に彼女は伝票を入れ終った封筒を差し出す。
それを受け取ろうとした瞬間、俺の手と彼女の手がコツンと触れた。
「あっ……ごっ……ごめんなさい」
「……いえ、こちらこそ」
しかし彼女は触れてしまった手もそのままに封筒を離そうとしない。
そして何か俺に縋るかのように瞳を揺らしている。
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