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何なんだ。この違和感は。
そう思った瞬間、彼女は震える声で俺に言った。
「それであの……。
受領書だけはこの封筒の中に入っている返信用の封筒で投函して頂きたいんですけど……」
言い終ってからも封筒から手を離さない彼女の瞳が揺れている。
それを見つめながら思う。
本当は……自分に執着する誠也から彼女は逃げたいのではないだろうか。
そう感じたのは俺とのやり取りの間、ずっと彼女は身体で誠也の動きを探り、怯えているように見えたからだ。
同じ日の同じ時刻に親を失った誠也と阿部遥香。
そんな二人が同じ会社で出会い、結ばれたのも運命ならば。
そこに俺が導かれたのも運命に違いない。
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