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「ちょ! 大和!」
呼びとめようとする真尋の声も無視して俺はプレハブ事務所の中から微笑んでいる春日のおやっさんの方へ歩みを進める。
しかし事務所のドアを開けた途端、俺は思った。
……ああ、やはり神は俺をとことんまで戒めたいようだ、と。
春日のおやっさんの向こう、カウンターの中から敵意むき出しの視線が俺を貫いている。
昨夜の雨が引き寄せた偶然は、もしかしたら必然だったのではないだろうかと思えるほどのこの状況に俺は失笑するしかない。
「不動君、こちら加賀美流通倉庫の出庫管理を担当してる糸井君」
おやっさんの紹介に俺が口を開こうとした瞬間、誠也が先に口を開いた。
「初めまして。不動さん」
昨夜とは全く違う、どこか見下したような口調で言った誠也の思惑は分からない。
けれど、その方が彼もやり易いという事なんだろう。
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